大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和57年(わ)3227号 判決

主文

被告人を懲役一一年に処する。

未決勾留日数中一五〇日を右刑に算入する。

押収してある改造けん銃一丁(昭和五七年押第七二〇号の一)、サングラス一個(同号の四)及びレンズ一個(同号の五)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  賭博場に押入つて金品を強取しようと企て、

一  藤井康信、森山利明及び中本成一と共謀のうえ、昭和五五年八月二〇日午前二時三〇分ころ、大阪市北区曽根崎新地一丁目七番八号新日本新地ビル三階賭博場「カーニバル」において、同店従業員金益沫(当時四一歳)らに対し、被告人において改造けん銃(昭和五七年押第七二〇号の一)を、藤井においてなたを、森山において水中ナイフをそれぞれ示し、こもごも「騒ぐな、おとなしくせえ、ぶつ殺すぞ。」、「早よう金を出せ。」などと申し向けるなどしてその反抗を抑圧したうえ、同店経営者魯元塾保管にかかる現金五〇〇万円を強取した

二  前記藤井、同森山及び島田政浩と共謀のうえ、同年五月一八日午前三時ころ、同区曽根崎新地一丁目九番五号中邦ビル三階賭博場「ナイン」において、別紙一覧表記載の開張者卞英人(当時二四歳)ら五名及び賭客徳永武司(当時三〇歳)に対し、被告人において模造けん銃を、右森山においてなたを、右島田において包丁をそれぞれ示し、こもごも「静かにせえ、動くなよ。」「言うとおりにしないと殺すぞ。」などと申し向け、更に被告人において右森山のなたで右徳永の右肩を切りつけるなどして右卞らの反抗を抑圧したうえ、同一覧表記載のとおり右卞ら五名から同人ら所有の現金合計六六八万円位及びショルダーバッグ一個(時価五万円相当)を強取し、その際右暴行により右徳永に対し、全治約七日間を要する右肩、右上腕根部切創の傷害を負わせた

三  前記藤井、同森山及び同島田と共謀のうえ、同年九月二一日午前二時三〇分ころ、前記「カーニバル」において、賭客の南口義治(当時四四歳)らに対し、被告人において改造けん銃(昭和五七年押第七二〇号の一)及びなた(同号の二)を示して、「静かにせえ。金を出せ。」などと申し向け、更に、開張者の魯元塾(当時五四歳)に対し、その顔面を右なたで切りつけるなどしてその反抗を抑圧したうえ金品を強取しようとしたが、右魯に激しく低抗されたためその目的を遂げず、その際右暴行により同人に対し、加療約二か月間を要する右顔面切創、右頸部切創等の傷害を負わせた

第二(銃刀法違反)、第三(恐喝、同未遂)〈省略〉

(累犯前科)〈省略〉

(法令の適用)

被告人の判事第一の一の所為は刑法六〇条、二三六条一項に、判示第一の二の所為は同法六〇条、二四〇条前段(検察官は被告人の同所為は同法二四〇条前段の強盗致傷罪のほかに判示別紙一覧表記載の者に対し同法二三六条一項の強盗罪が成立する旨主張するが、本件の如く同一場所で同一機会に数名に対して加えられた強盗行為によりうち一名に傷害を負わしめた場合には例え数名の所持金が奪われたとしても一個の強盗致傷罪が成立するにとどまり、他に数名について別個の強盗罪が成立するものではないかと解するのが相当である。)に、判示第一の三の所為は同法六〇条、二四〇条前段に、判示第二の所為は銃砲刀剣類所持等取締法三一条の二第一号、三条一項に、判示第三の一、二及び四の各所為はいずれも刑法六〇条、二四九条一項に、判示第三の三の所為は同法六〇条、二五〇条、二四九条一項にそれぞれ該当するところ、判示第三の二の各恐喝の所為はいずれも一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、同法五四条一項前段、一〇条により一罪として、犯情の重い辻高広に対する恐喝罪の刑で処断することとし、判示第一の二及び三の罪については所定刑中いずれも有期懲役刑を、判示第二の罪については懲役刑をそれぞれ選択し、前記の前科があるので同法五六条一項、五七条により(判示第一の一ないし三の各罪については同法一四条の制限内で)再犯の加重をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重した刑期の範囲内で被告人を懲役一一年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中一五〇日を右刑に算入し、押収してある改造けん銃一丁(昭和五七年押第七二〇号の一)は判示第二のけん銃不法所持の犯罪行為を組成した物で被告人以外の者に属しないから、同法一九条一項一号、二項を、また、押収してあるサングラス一個(同号の四)及びレンズ一個(同号の五)は判示第三の各恐喝及び同未遂の用に供した物で被告人以外の者に属しないから、同法一九条一項二号、二項を各適用してこれらを没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項但書により被告人に負担させないこととする。

(犯情について)〈省略〉

(山田敬二郎 浅香紀久雄 村田鋭治)

別紙 一覧表〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例